69. 26年目の挑戦

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四半世紀続けられた意味

1998年カナダ・バンクーバーへ渡ってから今年で25年目を迎えます。あの頃は、まだ「犬=調教」と紐付けることが多く、「犬の訓練士」になるためには、日本では「住み込み10年」と言われていた時代。もっと動物との歴史がある国で「犬の本質を学んで帰ってくる」という思いだけで、スーツ一つで飛行機に飛び乗ったのでした。

1998年バンクーバーにて

“DOGSHIP” という社名には、「犬に近いフィーリングを持ち合わせよう」、そして「その信念を育んでいこう」と気持ちが込められてます。私たちの身の回りには、様々な“シップ”があります。「ジェントルマンシップ」「スポーツマンシップ」と言われるように、” SHIP “ には、名詞としての“船”という意味だけではなく、順応性や心構え、精神及び身体的な適応力といった人格的なものもあります。本来、英語で”ship(シップ)“とは、「〜たる形」といった状態や身分を表しますが、語源を調べると「〜でありたい」という願いがあります。

cf> DOGSHIP の名前の由来
https://dogship.com/company/

恩師でもあるK9 Kinship オーナー:Joan Klucha とのプライベートセッション

この度、新旗艦をスタートするに当たり、これまでわだかまりとなっていた事柄について目を向けていこうと思いました。それは社会的にも問題となっている保護犬に関わる活動です。これまでも、保護活動に携わる団体との協業や、保護犬を迎え入れた飼い主さまのサポートに携わることがありました。しかしながら、団体同士のいざこざを目の当たりにする度に、心が萎えしまう自分がいました。ひとつの命を救うという目的は同じはずなのに、どうして関わる人同士がいがみ合わないといけないのだろうと。

今回、私たちは、これまで培ってきた知識や技術を提供する環境を得ることができました。そしてそのために必要なチームの構築にも注力しています。常々、我々DOGSHIP は、犬たちの行動修正のサポートに留まらず、動物看護師、トリマー等、行動・心理・医療・衛生・装飾といった多岐にわたるアプローチで犬たちとのコミュニケーションに努め飼い主さまとのナゴシエーターでありたいと思っています。

先日、Harbor に15歳の青年が研修乗船しました。
研修後、青年が親御さんに送った手紙を共有いただいたのでこちらで紹介します。

【当人コメント】

Thank you for letting me work at Dogship.

What I enjoyed most about working at Dogship was spending time with the dogs all day. This is something I dreamt of doing. I found I needed a lot of energy to take care of and keep up with all the dogs that you were watching. It was hard the first couple of times I went there and I got very tired after. I saw that dogs are more complex and intelligent than I thought. Every dog has a lot of different personalities. This is something I didn’t really know before I started taking care of Nowa. I find that dogs are like little kids. 

「DOGSHIPで働かせてくれてありがとう。
ドッグシップで働いていて一番楽しかったことは、一日中犬と一緒に過ごせたことです。 これは私が夢見ていたことです。全ての犬の世話をし、上手くやっていくには多くのエネルギーが必要であることがわかりました。最初の数回は大変で、終わった後はとても疲れてしまいました。 犬は思ったよりも複雑で賢いことがわかりました。 すべての犬にはさまざまな個性があります。 これは、NOWAの世話を始める前は、よくわからなかったことです。 犬は小さな子供のようなものだと思います。」

【親御さんコメント】

「親から見た感想としては、「子供よりも犬のほうが扱いが難しい「というコメントは、やはり言葉が通じない分コミュニケーションが難しいというポイントだと思います。

しかしこの経験を通して、価値観や考え方が違う相手とどうしたら意思が通じるのか、相手の立場に立って考えるいい機会になったと思います。

本当に貴重な経験をさせていただき、感謝です。ありがとうございました。」

自ら研修を志願し、私達 Crew に混じりながら犬たちとのコミュニケーションを学んだ日々。彼は、知識も技術も多く持ち合わせていません。にもかかわらず、彼の周りに自然と犬たちが集まってきていたのは、コメントからも感じられるような彼のハートフルな雰囲気を犬たちが感じ取っていたからだと思います。彼の手紙を読んで、犬たちの命を預かる者としての心構え、そして改めて動物たちの感性の高さと、空間づくりの大事さに気付かされました。

さらに、親御さんの思いは、温かく、海よりも深い。犬とのコミュニケーションを、自分ごととして捉え、一人の大人として成長してほしいという思いが詰まっています。そんな素敵なご家族と出会わせてくれた NOWA にも心から感謝です。

2001年、パートナードッグ:JUPEE と

25年前の私個人のビジョンと、これからのHarbor でCrew と大事にしたいと思っていることには、多少の差異はあるものの「動物の個性を尊重し、本質に寄り添いたい」という思いは変わりません。今の航海指針は、その時々出会った人々、そして犬たちによって、自然に誘われたように思います。

Harbor は2023年4月で9周年を迎えます。
さらに多くの笑顔が集う港になるよう、各 Crew が役割を持って舵をとって航海を進めてまいります。