私たちの身の回りには、様々な“シップ”があります。本来、英語で”ship(シップ)“とは、「〜たる形」といった状態や身分を表しますが、語源を調べると「〜でありたい」という願い –「ジェントルマンシップ」「スポーツマンシップ」− から生まれたという説もあるそうです。
つまり、”SHIP “ には、名詞としての“船”という意味だけではなく、順応性や心構え、精神及び身体的な適応力といった人格的なものもあるのだといえるでしょう。
トレーナーという仕事をしていると、あたかも犬のことを全て理解しているように思われることがありますし、そう思っているトレーナーもいるかもしれません。 しかし、人間である私たちですら、人間同士のことを知り得ていないのに、異種であるイヌの全てを理解することができるとは私には思えません。 しかし一方で人間は、自らの知識と経験をもとに、あらゆる感覚を通じて感じ取ろうとすることによって、犬の思いに近づくことが可能であると信じます。
言うまでもなく、完成された人間がありえないと同様に、専門家としても完成ということはなく、 常に「犬に近いフィーリングを持ち合わせよう」、そして「その信念を育んでいこう」。そんな想いから、 「DOGSHIP(ドッグシップ)」と名付けるに至りました。
人種のサラダボウルと言われるNew York。人工的な建物と、人為的な自然に囲まれたマンハッタンは、宗教や言語、多くの肌の色をもった人種が交錯しながらも、異文化が融合した街であるといえるでしょう。
私が、DOGSHIPをNew Yorkに設立しようと決めた理由は、二つあります。この「多人種と非自然」が両立している文化の中に、日本が今後抱えるであろう「犬との暮らしの問題」の一旦を見出したから、というのが一つめの理由です。
肌・髪の色の違い、宗教・言語等、New Yorkの人種の豊富さは、犬の世界のそれと非常に似ていると私は思います。そして現在の日本における家庭犬は、この街のように自然に接することの少ない場所で生きる事を余儀なくされているというのも事実でしょう。さらに言うならば、人間という存在。様々な「異なる」要素が絡み合い社会問題が多発しているこの街以上に、日本-特に都市-における犬との生活は、今後複雑化するに違いない。そんな刺激を与えてもらった地での設立は必然ではないか、と思ったのです。
さらに加えるならば、瞳の色や肌の色が何色であろうとも、誰も気にしないというのも New York。犬もまた、犬種や毛の色、大きさの大小や生まれ持った特性などが異なる社会を持ち得ていると考えている私にとって、「生まれながらの個性そのものを受け入れる」ことの大切さを体感できた場所であったことも、この街で、と決めたもう一つの理由だと言えるでしょう。 犬にも人間にもそれぞれ個性があります。だからこそ犬との生活の楽しみ方やトレーニングは、画一されたルールにとらわれのではなく、人によって選択枠を複数持ち得ていていいと思うのです。
私たちの使命とは「飼い主が犬と自分と向き合い、他の誰でもない二人だけのコミュニケーションを構築し、胸を躍らせて明日を迎えられるようお手伝いをすること」。 喜びにも多様性があり、幸せは日常にある。それこそが何より重要なことなのだと、私たちは深くそして強く信じています。