10.白い歯

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美しい犬とはどんな犬だろう。 その犬が、どれほど奇麗な被毛を身にまとっていても、たとえ素敵な香りを漂わせていても、歯にドッグフードがついていたら、百年の恋も冷める。まして口臭があったらショックだろう。しかし、犬の口が臭いのは当然だ、と思ったら大間違いである。 白い歯は、犬にとっても健康のバロメータ。 人間同様体質の個犬差はあるが、ドッグフードを食べて歯磨きを怠っていると、 どんな犬でも、虫歯や歯周病になる。

犬の歯の形状は人間とちょっと異なって犬歯がメイン。人間には八重歯はあるが、それらは英語で Canine(ポリス犬: K-9 は、これをもじったもの)といって、それらは噛み切るという作業がしやすく、汚れがたまりにくい形状をしている。しかし、歯の周りには、歯を支える色々な 組織(歯肉、歯根膜、セメント質、歯槽骨) があり、歯周病は、これらの組織が細菌に感染して起こる。また歯の周りだけじゃなく、全身的な要因、病気の原因にもなる。 ここで、犬の歯の健康状態をチェックしてみたい。 ・真っ白な歯をしてるだろうか? ・奥の方に何かこびりついていないだろうか? ・歯肉はぷりぷりしたピンク色をしてるだろうか? ・歯肉が赤くなって血がにじんでいないだろうか? ・口臭がないだろうか? ・食欲はあるだろうか? ねばねばした細菌の集まりがプラーク(歯垢)。その細菌が少しずつ死滅し、それに唾液成分の無機質が沈着。そして、それが石灰化して歯石となる。ま た、プラークは食べ物の中の糖分と、誰の口の中にもある細菌によって作られ、しかもそのプラークの90%は細菌である。

プラークが付着するのを防ぐも のとして犬用のガム等が売られているが、どうして 予防に役立つか知ってるだろうか? 確かに、べとべとしたおやつより歯に付着しにくそうではある。犬の祖先であるオオカミにとって、堅いガムを噛むことによって歯についた歯垢等をこそ ぎ落とすのは、獲物の骨をかじるようなものである。当時は、骨や骨髄から様々なビタミンやミネラルも同時に摂取できた。ガムを噛む(骨をかじる)と、多量 の唾液がでてくる。その唾液は口の中の汚れを流す役目もあるという。

ドッグフードではなく、獲物(草食動物)を捕まえて食べていた頃は、生肉に含まれ る多量の血液等の Ph のバランスによって虫歯になりにくかったのだが、加工製品であるドッグフードには多くの炭水化物が含有されており、加熱されているので、口の中はどうして も虫歯になりやすい環境だと言える。 歯周病の進行状態にはステップがある。 1、歯の付け根の表面に、プラークがたまって歯の周囲や歯と歯の間の歯肉に炎症がおこる。
歯磨きをしたり、骨を噛んだりしたときに出血するときがある子はこの段階。この時は痛みも余り感じないが、この状態を歯肉炎という。 2、プラークが歯石に変化し、歯石が大きくなっていくと、歯根膜が溶けて歯肉溝の中にも広がり、次第に溝は深くなっていく。
そうなると歯肉は張り が無くなって歯周ポケットっていわれる空間ができてくる。歯の付け根が黒く変色していたり、ざらざらしたものがついている子はこの段階。 10.白い歯10.白い歯3、症状が進むと歯周ポケットがさらに深くなって歯がぐらぐらしてくる。
出血や口臭も強い状態。この状態が歯槽膿漏(しそうのうろう)。このまま だと細菌が血液を介して全身に流れ、その他の病気を引き起こす恐れがあるから、とっても危険な状態。

歯周病は急に悪くなる時期(勃発期)と静止期を繰 り返しながら進行するので、大したこと無いと思っても、早めに獣医師さんに診てもらって欲しい。 日々ストレスをなるべく少なくしてあげることも重要。ストレスをためている犬は人間同様、体の抵抗力が落ちてしまう。

歯周病が進行して出来る歯 周ポケットの内側には、1mg(湿重量)あたり400種、1億個以上の細菌が発生し、体との間で、免疫応答といわれる戦いを繰り広げている。だから、抵抗 力が弱まれば、全身に色々な症状が現れて来る。 では、実際に口臭がない白い歯を保つために犬にとって大切なこととはなんだろう? まずは、2~3日に一度でもいいから歯磨きをしてあげてほしい。ブラッシング(歯磨き)は血行を促進し、炎症を鎮める効果がある。歯周病を予防して、進行を防ぐには、まずプラークをためず、歯周病を進行させないことが一番である。 そして、日々、大好きな家族と共に素敵な時間を過ごせることも大事ではないだろうか。僕たちだって好きで口臭があるわけじゃない。それは家族の責任。

 犬が健康でいられるかいなかは、家族に委ねられている。犬がクレイムをいれることはないが、やはり家族には好かれたいに違いない。 (2004.12.09)