27.専門家としての学び

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先輩トレーナーの声かけもあり、先日カナダ・トロントに近い、グエルフで行われたセミナーに参加した。 私にとってグエルフは、8年前にカナダの犬文化を見るべく、訪れた思い出の地でもあった。今回、そのグエルフにあるグエルフ大学で、セミナーが行われるということで、感慨深く足を運んだ。今回のセミナーは犬について研究を続けてきた専門家の講義だったのだが、驚くべき事は、参加者107名のうち9割が現役のトレーナー。そして残りがグルーマーと獣医師であった。 参加者は、カナダ全土、アメリカからが殆どだったようだったが、これまで、自分が知っていた「飼い主のための」というレクチャーやセミナーとは、主旨も内容も全く異なり、完全に現役トレーナーに対する研究者側からの視点による内容と進め方だった。 その為、参加者の目は、いかに自分の今後に役立てる事が出来るか?真剣そのもの。自分の場合、そこに言葉の壁もはだかった。これまで自分が海外で勉強してきて、聞いたこともないような専門用語が羅列し、慣れるのに時間と疲労を期すものだった。 会場のロビーではトレーナーとして勤めて行くために必要なグッズやテキストが販売され、中には「コピーライト無し」のテキストも販売されていた。 いかにも「合理主義」的考えで面白い。今回のセミナーを通して、これからのトレーナーに求められるものをイメージする事が出来た。今回のようなセミナーの参加者の感じ方は様々だろう。自分のフィルターを通して自分にフィードバック出来る人、または高額で販売されていた、誰かがまとめたテキストをそのまま使ってトレーニングを行う人。 しかし、対象が「犬」である以上「犬は犬」であるのだから、内容が全く違ったことを語っているとも思えない。また、それぞれがトレーニング方法やトレーニングメソッドに沿ってプログラムを作っていても、みんな、その分野の専門家として「犬と飼い主」にとって良い方向になるように努めているはずだ。 だとしたら、「私のやり方はこうだ!」と主張することよりも、同じトレーナーとして意識向上、切磋琢磨して、より良い犬文化に向けて頑張っていくべきなのではないだろうか?今回のセミナーに参加し、私が一番気持ちよく感じたのは、専門家が集まる場で、そういった、いい空気を感じる事ができ、また、みんなが保守的ではなく、前向きだったところだ。全てが犬のことだけに集中していた。 参加者107名中男性は7名のみで、また全体の年齢層は、40代~50代が一番多かったように思う。これが意味するものは何か?私達のようなトレーナーと言われる仕事に就く為には(仕事になるまでには)、通常最低10年はかかると言われている。 知識だけではなく、それほどの経験と己の精進が必要であるという証拠だろう。また、実際にトレーナーの仕事に就いていて、常々感じるのは「頭脳・感覚と同じくらい、体力も必要とする職種だ」ということだ。そういう面で言えば、最近の男性陣は体力がないということか? 男性陣、頑張ろうではないか。 久々に「学生」をした。清々しかった。「学ぶ」ことの喜びを改めて感じると同時に、新たなビジョンが見えてきた。今回、大学生と一緒に大学に通い、朝から晩まで頭から体の隅々まで全身全霊で犬のことを考えた。そして、同じような人が国籍など関係なく107名集まった。それも、ごく自然に。きっと、みんなの「船首」が同じ方向に向かっていたからに違いない。 これって、もしかしたら同じ日本人同士だったら、もっと凄いパワーが生まれるんじゃないだろうか?また、ワクワクしてきた。これからの日本の捨て犬の数を増やさない為にも、減らす為にも。私は、そう思えて仕方がない。やりたいことが、またひとつ見つかった。 (05.10.26)