19.日常のお散歩

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先日、ある日本の雑誌の取材を受けたときの話。「楽しいお散歩として新しい提唱はないですか?」と聞かれた。 おそらく、先方は「セントトレーニング(くんくんゲーム)」の紹介を考えて下さっていたのかもしれない。しかし、わざわざ雑誌で取り上げるのであれば、新しい「how to(方法)」だけではなく、「楽しいお散歩」とは本来どういうものか?を読み手(飼い主)が、それぞれ考えるきっかけになる内容であるべきだと思った。 New York でのお散歩は、人と車が行き交う街の歩道が常だった。足場はアスファルト、鉄製の歩道もあった。そして、食べ物やゴミも至る所に落ちている。みんながマーキングしたくなる鉄塔は、感電する懸念があるらしく「マーキング禁止」のサインが書かれてるところもあった。最寄りにあったセントラルパークは朝9時までは、それぞれの責任下において Off leash が許されているため、早起きして土の上での散歩を楽しんだ。 New York での散歩では、いつもたくさんの人が声をかけてくれた。「何ヶ月?」「犬種は?」もしそこに会話という交流が成立しなくても、すれ違い際、笑顔やウインクを送ってくれる。私はいつも「君のお陰で、自分も、ここ New York に生きているんだ、自分も街の一部なんだって感じることが出来る。頑張る力が湧いてくるよ」と、感謝したものだった。 Vancouver での散歩は、180度異なる。ここには、車で20分圏内に10カ所以上の散歩コース(トレイル)がある。森の香り一杯の山道、渓谷を流れる川、そして、爽やかな潮風を浴びながら歩ける Sea walk。その日の気分、天気によって散歩コースを選択出来る。全て Off leash で歩けるわけではないが、みんなハンドラーの管理の元、散歩を楽しんでいる。でも、Vancouver での散歩では、挨拶は交わすが、New York と比べると断然話しかけられる頻度は少ない。しかし、ここでも、「君のお陰で、早朝からこんな山奥に来れ、森林浴をすることが出来るよ」と犬に感謝する。 そんな話をしたら、取材の方に「もっと普通の、通常の楽しいお散歩について話を聞かせて下さい」と言われた。楽しい散歩とはなんだろう?ハンドラーである飼い主が、いかに楽しめる時間であるかどうか?ではないだろうか? 「犬のために!」なんて名目をつけられたら、犬だって迷惑ではないだろうか。犬というのは、飼い主が嬉しかったら自分たちも嬉しいものであると思う。結果、それが犬にとってもハッピーである内容だったら、犬はさらに嬉しいに違いない。自分のライフスタイルに合わせて犬と付き合うことも大事である。なぜならば、犬は、かなり飼い主に柔軟に対応出来る生きものであるからだ。 飼い主が平日仕事で忙しいのであれば、帰宅の度に「ごめんね」と謝るのではなく、「私は、こういうライフスタイルであり、お留守番は必須である」と言い切り、その分、早起きし、多めに散歩に連れて行ったり、留守中のドッグウォーカーに散歩を依頼し、犬に対して「申し訳ない」という「引け目」な思いを排除すればいい。そうすれば、犬は素直に順応するに違いない。 大事なのは、お散歩の how to、場所ではなく・・・それぞれの環境によってお散歩の楽しみ方は異なり、また、飼い主によってその「喜び」の指標も違うのだから、その人(犬)が住んでいる環境とライフスタイルにおいて、いかに楽しくお散歩が出来るかどうか?だと思う。 私もいづれ、日本で散歩をする。その時に「Vancouver はこうだったのに・・・」なんて帰国子女ぶった言葉は、死んでも使わない。場所は何処であっても、飼い主と一緒に、そこでの散歩を楽しめないんだったら、何処に行っても同じ。 「君がいる」そして「私がいる」。そこに「楽しさ」が存在するのだと私は思う。 (2005.09.05)