犬の十戒
「きっつぃなぁ」
これが、“犬の十戒”をはじめて目にしたときの気持ちだった。
1998年カナダ・バンクーバーに渡り、犬の勉強を始めたとき、”DOG TEN COMMANDMENTS” というものを読んだ。今でも胸の奥がキューンとしたのを覚えている。それが、映画化され上映されることになった。あのキューンをどうやって映画にしたんだろう。当時英語で読んだときのインパクトが強かったからか、そればかりが気になっていた。
そんな時、嬉しい報告があった。試写会のお誘いだ。しかも、ドネーションマガジン ONE BRAND さんの取材付きだ!映画の題名は「犬と私の10の約束」。なるほど、「約束」かぁ!興味がグンとあがった。「戒め」なんて題名だったら、観る前から気持ちは沈んでしまったに違いない。朝早い時間からの試写会にも関わらず、私はマイ・タオル持参で松竹さんの試写室に挑んだ。
いざ、上映開始!
・・・やはり、泣いてしまった。
それが、ストーリーに対する涙ではなかった。そして面白いのは、試写している人の泣くタイミングが同時じゃなかった点。さざ波のように、あるきっかけを機に、至る所で涙があふれ出てきているのが分かる。
この涙こそ、これからの社会における動物(犬)と人との関わりの Key になると私は思った。
この涙。誰かが亡くなったからとかだけじゃない。涙した人は、一度は動物に触れたり、何かしら関わりを持った人に違いない。そして、自分がその動物にどのような気持ちでどんな風に接したかをフィードバックし、その時の自分に自問自答して、何かを感じているのだ。自分を感じ、自分に涙しているのだ。その経験値や感覚が異なるから、泣くタイミングがずれている。そして、その涙は、心の奥から湧き出てくる。
また、職業柄、いろんな視点から映画を観てしまう。悲しげなシーンで、犬も悲しげだろうか?嬉しいシーンで、犬が緊張していないか?今回の映画の(犬の)演出は素晴らしかった。主役とも言える犬が、その時々に相応の心情でいたように感じた。
一番好きだったシーン。
それは、ヒロインのあかりが数年ぶりに幼なじみの進に出逢い、帰路を共にするシーン。二人の手が繋がったとき、ふとソックスのハナがその手に触れる。この映画で伝えたかったことを象徴しているように感じたシーンだった。
私達人間は、弱い生き物だ。だから、人間の周りに動物がいる。だから、私は犬と暮らしている。犬が側にいる。犬の素晴らしさは、私達が気づかないものを、気づけないものを気づかせてくれるところにあると思う。それにすら気づけなかったら、犬を飼う資格はない。
「その国がどれほど豊かであるか?は、その国で動物がどれほど大事にされているかどうかで分かる」
この言葉が意味するところをよく考えてみたい。「豊かさ」「幸せ」の尺度は人それぞれだと思うが、自分がどんな気持ちで普段、動物(犬)に接しているか?再度ふり返ってみてほしい。そこに、どれほどハッピー度合があるか?きっとあなた自身の中にその答えはあるはず。
涙した自分を受け入れてあげてほしい。
「あのとき、こうしてあげられていれば・・・」
きっと、次は大丈夫。その涙で私達は、美しくなれる。涙した分だけ、美しくなれる。
この映画を介して流す涙。その涙は美しい。
ボクとイヌとの11番目の約束:
わたしは、あなたの鏡です。わたしは、あなたしかみていないのですから」
ONE BRAND vol.14 より
(08.03.07.)