53. 観察眼

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「犬って可愛い」 といって頭を横に振る人は少ないだろう。いたとしたら、これまで、何かしら嫌な経験をしたことがあるからに違いない。しかし、その経験とは、本当に「犬」だけによるものだけだろうか? 先日、華やかな場に同席させていただいた。昨年、全国7都市を廻った「グリニーズ・ハッピードッグランフェスタ」のスポンサー: Greenies の親会社の社名変更プレス発表会ということで、T4 のメンバーと共に参加してきたのだが、それはそれは盛大な会だった。オペラ歌手は唱う、バルーンは飛び・舞う、そして、そんな中、著名人によるトークショーが始まった。 トークショーの中で、特に感銘を受けた人がいた。それは「デビ夫人」。トークショーの中で彼女が話していることを聞いていて、「ただの愛犬家か・・・」と思いきや、ビクッとするようなコメントが多々あった。 彼女は犬を十数頭飼っている。多忙な彼女だから、全ての犬の世話を彼女がしているとは誰も思わないが、彼女が自分の犬を捨てるようなことはしないだろう。なぜなら、デビ婦人は「犬=個体」という視点で犬のことを話していた。どの犬のどういうところが個性的で魅力的であるか?言葉にすることが出来ていた。 ただひたすら「ほんと、犬はかわいいですよね〜」「犬はいやしてくれますから」以上のコメントが出てこない他のゲストとは、違った。 犬を擬人化する付き合い方を奨励するつもりはないが、イヌを個体の犬として認めて付き合ってあげることは、我が子との「共存」という点で、大きなヒントになると思う。 先日オンエアされていたテレビ番組で「問題犬」を扱っては「吠える=問題行動」と一括りにされていた。「吠える」ことがその犬の問題行動ではない。私の実家界隈(宮崎県都城市)で吠えていた犬は「優秀な番犬」として褒められる場合がある。犬は吠えて当たり前。赤ちゃんは泣いて当たり前。ただ、泣くにも吠えるにも理由がある。その理由が何であるか?我々が理解できているかが一つのポイントだ。そのために、非常に有効なモノがある。それがあれば、問題が問題ではなくなってくる。 「観察眼」自分の犬の現状把握のために非常に有効であり、誰でも持つことが出来るモノ。いかに早く、いかに効率よく、いかに正しく、個体の現状を把握できる「観察眼」を持ち合わせているか?が我々専門家のプロかアマチュアか?の指標基準になる。 DOGSHIP では、ご自宅や公園等に我々が出張するプライベートレッスンを行っている。グループクラスとは異なり、一対一の時間は、より飼い主の方の意識レベルに合わせてクラスを進めることが出来るから、より効率的であり、ワクワク感が一杯だ。飼い主の生活環境、リクエストに応じてオリジナル・プログラムを作成し進められるプライベートクラス。しかし、中には、一般的な「しつけ」の域を超え、犬の生態や行動心理まで興味を持たれる意識の高い方もいる。そんな方には、ドンドンこちらから課題を出させてもらう。そして、ある日「次回までに愛犬をじっくり観察しておいて下さい」とお願いした事があった。すると、飼い主の方がこんな絵を描いて提出してくれた。この絵に表現されている犬の生態・行動・心理の数々・・・最低2時間は語れる情報量がここに詰められている。 こんな風に、愛犬を観察できている飼い主と暮らせているこの犬たちは、どんなに幸せだろう。犬の意味ある行動や目に見えない心理を理解しようと努めて下さる飼い主の姿は、異文化の外国人を好きになった時に似ていると私は思う。血筋も文化も育った環境も全く異なる異文化の人を好きになった時、僕達は、相手を受け入れようとし、相手の国の言葉や文化を知りたい、学びたいと思うだろう。その時、自分の考えだけを押しつけるようなことはしないだろう。 犬が好きじゃない人は、以前、周りへの配慮が足りない犬の飼い主に嫌なイメージを持った経験があるのではないだろうか? 犬のしつけの本を読みあさるよりも、まずは我が犬の性格と習慣を観察し現状を正しく把握し、周りの中での自分を見直してほしい。しっかりとした観察眼を持って愛犬を観る事が出来れば、少し自分勝手だったことや、過大評価していたこと、犬を勘違いさせていた自分自身と、周りへの配慮の重要性に気づけると思う。気づけなくても焦らなくていい。そんな時は、周囲に聞いてみるといい。 (08.02.05)