44. 奇跡

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この世に「奇跡」があるのであれば、それは非科学的なことや、まか不思議な事象なのではなく、「(身近な)物事に対する自分自身の見方が変わる事」であるように思う。 我々人間は、常にないものを欲する。今あるもの、今手にすることができたものの価値は、時間と共に暗雲に包まれていく。犬の行動について相談を受ける際、その時、その犬が「問題行動」をする犬として名札を付けられている場合が多い。もちろん、飼い主の方は数日前からではなく、ずっとその動向と向き合い、悩み、葛藤し、そして現実と向き合ってきた。その辛い思いは、第三者には想像しきれない部分だと思う。私は、その状態を「人と犬とのコミュニケーションについて『ひずみ』が生じている状態」と考えている。 実際に飼い主の方にお会いして感じるのは、自分がどれ程、愛犬の困った事象と向き合ってきたか?犬がどれ程困った犬であったかどうかを伝えたい!という思い。また、この時「困った顔」をしている犬に、私は出会ったことがない。しかし、よく見ていると、ダメダメ120%な犬と言われていても、案外いい「立ち居振る舞い」が観察できるものである。人に吠えるといった犬であっても、飼い主が名前を呼んだら反応できたり、おやつをあげようとしたら、目の前で座る事ができたり・・・その場だけではない、普段の生活の中でも十分に褒めうるべき動向が、いつの間にか、飼い主自身が見えなくなっている、気づかなくなってくる。それこそが、お互いのコミュニケーションにおける「ひずみ」といえよう。 人というのは、相手の良いところを捜すのが大方苦手だと思う。それよりも、人の悪いところ、気になる部分というのは、案外簡単に見つけることが出来る。自分の犬の良い動向が目にとまらず、日々の生活の中で引き出された人間が望まない犬の動向に、つい目がいってしまうのは、当然のこと。しかし、それを「困った」と思う時点で、飼い主である我々人間のみが「困っている」。 ”悩みを悩まない” これは、私がプライベートにおいて心がけていること。困っている人の周りには、いいエネルギーは回ってこない。悩みを悩んでいる人は、悩みから脱せない。だから、犬の業界では、私達トレーナーがいる。主観的にしか観れなくなった飼い主の方に、客観的な視点から、更に改善に持って行くための犬の生態と行動心理に沿ったアドバイスをする。まずは、飼い主のたまりまくったモヤモヤに耳を傾ける。そして、現状をしっかりと踏まえた上で、最も効率が良いであろう方法を選択し、伝えていく。その時、選択肢をいくつ持っているか?そして、最も効率が良い方法を選べるかどうか?がトレーナーの手腕となる。そこに定石はない。だからこそ、書籍でも、インターネットでもない、私達生身のトレーナーの存在価値があるのだ。そして、その想いを、どれほど飼い主の方に伝えることが出来るか?これが、私達の課題。 「奇跡」は、身近に存在する。そしてその光は、あなたの中にある。その光にビッグバンを起こしたい。ろうそくの光もステキだけど、これまでのうっぷんを吹き飛ばすには、このくらいなくちゃ。 「気づき」という光を、一つでも多く見出したい。これが私達の目指すドッグトレーニング。 「内なる自分を変えることにより、全ては新たになる」   =聖パウロの言葉より= (07.05.08.)