64. Dog Therapy

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Dog Therapy を思う。 N.Y. 滞在時、Manhattan にある病院で、ドッグセラピーをボランティアで続けている Beth の活動に同行させてもらった事がある。 会うやいなや、私は TEMPORARY ID と呼ばれるタグを渡された。そこには、私の名前と、POSITION が書かれてあった。それは「同伴者ではなく、スタッフであるという意識」を持たせる事が目的だった。 彼女は自分の愛犬: FOREST (Toy poodle) を同伴していた。その子こそ、セラピードッグとして認可されているプロフェッショナルだ。その堂々たるや誇らしげで「今日のメインは私なのよ」と言わんばかりであった。 一緒に病棟に入るとFOREST は病棟のスタッフから名前を覚えられており、有名人(犬)であった。 病室を一室一室回っていく。 Beth が「こんにちは、セラピードッグです。入ってもいいですか?」と聞く。その場で、犬嫌いな方は「いや結構です」といえるし、犬好きな方は「もちろんよ、入っていらっしゃい!」と嬉しそうに応える。 今回の施設は総合病院であり、院内に轟く患者さんの声の大きさや、その抑揚は様々で、個々の病状が想像できた。一緒に病室に入ると、Beth は、患者さんに声をかけながら、肩にかけていた薄くて軽いブランケットをベッドの隅に敷き、FOREST を乗せた。犬を直ぐに触ろうとする患者さんもいれば、動きがゆっくりな方もいる。たとえ腕から手にかけてギブスをはめていたとしても、それは躊躇しているわけでは決してなかった。「犬を驚かさないように」という彼等なりの配慮に違いなかった。 十分なリレーションシップがとれると、案外さっぱりと次の部屋へと移動していくFOREST 。「じゃぁ、また今度!」彼女を待つ患者さんは病院内に多くいるのだ。 途中、Beth がこんな事を言っていた。「セラピードッグですと声をかけるだけで、『なんで病院に犬がいるんだ!』と怒鳴られたこともあります。もちろん、セラピードッグの効果が期待できるということは、犬嫌いの人にとっては同じくらいマイナスの効果があるということでもあるのだから。でもね『早くよくなって自宅で飼っている犬に会いたい』『お散歩をしたい』って思ってもらえたら私たちの活動は十分だと思うの。時に『FOREST に会いたくて、また入院したくなります』なんて冗談を言われる方もいらっしゃるけれど(笑)」。 Beth はトレーナーでも獣医師でもない。一般的な犬の飼い主だ。ただここでは、彼女はみんなから親しまれ、確かに必要とされている。「あなたがこの活動を始めようと思ったきっかけはなんですか?」と聞いてみた。彼女は「私と FOREST にも出来ることがあると思ったからよ」と答えた。「どうしてこの活動を続けているのですか?」「だって楽しいからよ」。そこにはボランティアとしてだけではない、彼女の「確固たる想い」を感じることが出来た。 世界中で、AAA (Animal Assisted Activity-動物介在活動)やAAT (Animal Assisted Therapy –動物介在療法)等、行われている昨今、日本でも様々なセラピー活動が、ボランティアによって行われている。今後、こういった分野の活動がさらに活発なり、その活動内容が認知されるようになって欲しいと願う。 先日、スタッフの長年の強い思いが実り、介護施設でのドッグセラピー活動を担当することになった。犬たちを見て、触れて・・・「私は昔、柴犬飼っていたんだよ」なんてお話をされたり、入居者のみなさんはもちろん、参加下さったみなさんも、自然と笑顔が溢れていた。 今回参加した犬は家庭犬であり、特に二頭は里犬であった。一度人に見放された子でも、こうやって、また人にエネルギーを与えてくれる。里親になったご家族のこれまでの努力も大きかったと思うし、動物と共生することの恩恵と可能性を感じる。 捨て犬の数が問題視されているが、「拾う」事以上に「捨てないこと」が重要である。今、そこにある命を、責任を持って全うさせること、それが私達飼い主に出来る事であり、責務であると思う。 (2012.06.01)