「柴犬哲学」コラム

老いた柴犬と暮らす幸せについて

 

3月10日発売された「柴犬哲学」。

テーマは「老いた柴犬と暮らす幸せについて」

老柴犬ならではの魅力や、それにまつわる寂しさや悲しさやうれしさ。

長寿を目指そう!ということではなく、ただいっしょにいることの尊さ。

ひなたの縁側にいるような気持ちになっていただけたら嬉しいです。

 

【掲載コラム】

ついこの間まで私も、シニア犬と暮らしていた。

洋犬(名:FIDO)ではあったが、柴犬に負けず劣らず己の時間や空間を大事にする男だった。

私が酔って帰宅し「会いたかったよ」と寝ている FIDOに寄り添い、ハグをする。

至福の時間だ。しばらくして気づくと、FIDOのベッドでひとり寝てる自分がいる。

FIDOはいつの間にか違う場所に移動して寝ているといった具合だ。

 

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シニアになるとパピーの頃のように甘えん坊になる子や、わがままな面が強くなる子がいて

それは性格によって異なるようだ。

ただ大方共通して言えるのは

シニアになると「時間軸」が大きく異なるという点である。

 

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時間とは面白い概念だ。

極めて抽象的であり、感覚的でもある。

私たちも一緒に過ごす相手によって、時間が長いと感じる相手がいれば

あっという間だったと感じる相手もいる。

同じ時間であったとしても「相性」に因って感じ方は異なる。

人間という同種であってもそういったことが起きるのだから

異種である犬とは時間軸が異なって当然だろう。

 

犬は約7倍の速さで時間が過ぎるとされる(犬種や年齢によってその指標は変容する)。

5時間のお留守番は、1日半ひとりでいたかのように犬には伝わる。

だとしたら、シニア期の時間がいかに貴重で尊いものかわかるだろう。

そんな大事な時間を、互いの感性に留意して考えてみたい。

 

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【感覚の変化】

・視覚

犬は加齢と共に、特に顔周りの被毛が白色化する傾向がある。

それは犬種や被毛の色に関わらず生じる(被毛が白色の犬は、毛の質の変化により光の反射が変わる)。

一般的に動物の世界で「白色」は「平和」や「優しさ」「寛容」を意味する。

白鳥や白い鳩が象徴的だ。

つまり、加齢に伴い、犬自身も穏やかな状態に移行しており、同時に周囲に対する影響力も変容しているのだ。

 

・嗅覚

次に匂い。

若い頃のフェロモンぷんぷんで血気盛んな頃とは異なり

ホルモンの分泌バランスも変わり、愛犬の香りは共に過ごしてきた歴史と思い出の量に比例して

「心地よさ」や「安心」の香りとして映っているに違いない。

太陽光があたる場所で一緒に横になっていると、その幸せ感は半端ない。

ぽかぽかと一緒に愛犬の香りが芳しくなり、ついくんくんしたくなる。

 

犬の嗅覚は加齢と共に衰えない感覚でもある。

目が見えなくなるシニア犬はいても、匂いが嗅げなくなるシニア犬はいない。

命の灯火が小さくなった際でも、犬は嗅覚で状況を認知することができるのだ。

だからきっと愛犬も幸せな匂いを共感してくれているはずだ。

 

・触覚

触る。

その時、手のひらで感じる印象はパピーの頃とは大きく異なっていることだろう。

物理的な被毛の硬さや長さといった印象ではなく

これまで嬉しい時、楽しい時、悲しい時、側に寄り添ってくれた我が子と触れ合い

共にしてきた経験があるからこそ

今、こうして「生きている」という証を手のひらで感じることができることのスペシャリティー。

まさにかけがえのない時間だ。私たちの手は「手当て」というように

気持ちや想いをつたえることにも有益で繊細な部分。

何も喋らなくてもいい。ゆっくりと、長いストロークで動かす

場合によっては、手を添えてそのまま動かさなくても良い。互いの触覚で感じ合いたい。

 

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【ゆっくりを楽しむ】

シニアに近づくにつれて時間の速さも大きく変わる。

気づけば、自分の年齢を超えている愛犬。

散歩にも生きたがらなくなり、歩いても牛歩並の速度。

それでも、気分転換になればとおもい、外に出かける。それでいい。

かならず来る次のステージ。人はそれを「別れ」とも言う。

その時まで、可能な限り、側で過ごせる時間にたくさん話をして、触って過ごしたい。

それはあたかも時間を共にしてきた自分自身との対話とも言えるだろう。

愛犬のリアクションが帰ってくることの価値は、別れが来た時によくわかる。

だから今を大事にしたい。

今私たちは生きている。

もっと触ろう。もっと話そう。そして、もっとくんくんしよう。

 

Captain

コメント

  1. 紙ヒコーキ より:

    時空間を超えて
    愛しい犬たちと心が重なり合えますように♪

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