読みものタイム♪

正月だからエッセイ!?

 

年始、お時間がある方もいらっしゃると思いますので

先日、執筆したエッセイをこちらにアップしたいと思います。

フレンチブルドッグ専門誌での執筆内容ではありますが

基本的には、全犬種対象と考えて良いと思っています。

 

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BUHIhttps://frenchbulldog.life/buhi

2022年冬号 vol.61

【最新号】BUHI 冬号2021「フレンチブルドッグに良いこと、悪いこと」

 

<第一章>

【何が良くて何が悪いこと?】

日々、私達はどれほど愛犬と見つめ合っているだろう?

愛犬とどんな話をして、何を共有しているだろう?

日常の何気ない時間は何物にも代えがたいものであるが、それをお互いのスペシャルなギフトとしてラッピングするためには、飼い主の気持ちや心がけ次第だ。愛犬と一緒にいると、誰もが「幸せ」に触れることができるが、「幸せの質」を高められるかどうかは、実は飼い主に委ねられている。なぜならば、犬はみな幸せの本質を知っているからだ。

コロナ禍で多くの飼い主が職場やプライベートでも制限を受けてきたと思う。でもそれは、愛犬も同様で、むしろ飼い主のストレスや鬱憤を目の当たりにし、場合によっては、ネガティブなエネルギーを受け止めてくれていたかもしれない。それは、ここ数年、私達専門家のもとに「噛む」「吠える」等のシリアス案件の相談が著しく増えていることからも想像ができる。家庭犬たちにとっては家族の存在が全て。家族のライフスタイルの変化、心情の変化を間近でみているのが犬たち。さらに犬は飼い主が大好きだ。だとしたら、飼い主の一挙手一投足に興味を持ち、順応しても不思議ではない。だからこそ、これを機に、愛犬に日頃のお礼を伝えるためにも、明日以降、今以上によい関係性を構築していくためにも、あらためて向き合ってみようではないか。

 

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これまで、愛犬の関係性に悩んだときは、書籍やネット情報をリサーチしてきた飼い主も多いだろう。それらには間違ったことは書かれていないのに、「うちの子には合わない」と感じ、実用的ではなかったという経験も多いのはなぜか?そこに書かれていることは最大公約数であり、あなたと愛犬のことを知らない方が記述しているからに違いない。あなたが作ったハンバーグを、「きっとこんな味だろう」とコメントしているのと相違ない。とはいえ、それらの情報が間違っているわけではない。あくまでも参考書レベルで認識し、参照するくらいの心持ちがあれば問題ないのだが、どうしても「うちの子はどうしてできないのだろう?」「違う本を買ってみようかな?」と本来の主旨と矛先が変わってしまうことも多い。

大事なことは「愛犬ともっと向き合うこと」。ただ、それがわかっていてもなかなかできないんです、というのは私も同意だ。

 

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【答えは目の前にある】

情報として「何が良くて、何が悪いか?」はさほど重要ではない。目の前にいる犬を単に傍観するのではなく

  • 愛犬が何を考えているのか?犬の心情に注目すること。
  • 自分とどのように関わっているのか?互いの関係性を俯瞰すること。
  • ご自身がどういう行動傾向があるのか?自己評価をしてみること。

これらに留意してみてほしい。なぜならば、地球上に住む哺乳類の中で、最も人間と有機的な関係性を求める動物こそ「犬」であり、その中でも関係性が特異なのがフレブルオーナーなのだから。

 

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【もっと話をしよう!】

では、愛犬と自分との「正解(落とし所)」をどのように見出していけばよいのだろう?

日常的に私達は「話」をする。それは必要に応じての場合もあれば、意志の確認や、意思表示のときもあるだろう。人間同士でも、家族との何気ない会話から、友人との相談、そして職場での打ち合わせ等、「話」をするシーンや目的に応じてそのスタイルは変容する。ここで「犬が人の言葉がわかる」かどうか?という点については

・科学的に犬は約200語ほどの言語を聞き分けることが出来る

・経験値的に犬は言葉に含まれる感情を読み取る能力が高い

・犬にも感情(嫉妬、同情、興奮、不安等)がある

等を踏まえておきたい。

 

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【会話からは何も生まれない】

私は、愛犬と話をすることを悲観しているわけではない。人間同士の会話も同様で、「会話」レベルからは「創造性」のあるものは生まれにくい。「今日はいい天気だね」「お腹が空いたね」等々、普段、自然に会話に出てくる自然環境の話題や日常的な事項は、耳障りも悪くない。むしろコミュニケーションにおいては、大事な導入部分になることもある。しかしながら、そこに「気づき」や「学び」は少ないのだ。

では、国会対策の党首討論のような「議論」はどうだろう?残念ながら、議論からは「よりよい方針」は生まれにくい。なぜならば「議論」は、どちらかがどちらかを論破する傾向があるからだ。自己の意見や考えを相手に押し付けがちな意見交換は、違う考えや思想を受け入れるという心情になりにくい。どうすれば自分の立場や気持ちを相手に受け入れさせられるか?に注力されがちだ。

 

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【対話は化学反応を生む】

そこでおすすめしたいのが「対話」することだ。自分の考えを据え置きながら、相手の考えやビジョンに耳を傾ける。相手の話を聞いて、自分の発想を付加していく。つまり、対話は足し算ではなく、互いの「気づき」を通して、新しい発想が生まれていくクリエイティブなアプローチなのだ。私自身も日々、常に犬と向き合い、コミュニケーションをはかっていくプロセスを通して、人として人同士のコミュニケーションについて気づきと学びをもらっている。だからこそ、日々犬たちに感謝の気持ちでいっぱいだ。

<式例>

会話:A+B=0

議論:A+B=A or B

対話:A+B=A’ + B’=C

 

これまで愛犬と会話をあまりしてこなかった方は、まずは愛犬に話しかけていただきたい。彼らはきっとあなたの声に反応し、耳を傾けてくれるはずだ。なかには近づいてきて Kiss してくれる子もいるかもしれない。それこそまさに、既に「何か?」が生まれている証であり、今日よりも明日が素敵になっている兆候だ。まずは、愛犬との一線を超えてみる。ゼロよりもプラスがいい。

 

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【会話を超える対話案】

人間のパートナーに対し、「どうしていつも自分のことを優先するの?」と言葉を投げかけて、有益なリアクションが帰ってくることは考えにくい。興奮する愛犬に「どうしてそんなに吠えるの?」と発問して納得するリアクションが帰ってこないのと事情は同じだろう。まずは相手を攻める前に、自分の行動や心情を振り返ってみよう。相手との「対話」も大事だが、まずは自分と「対話」するところから始めてみたい。

なぜなら犬は私達人間社会のルールや環境にアジャストして、生活してくれているからだ。本来であれば、薄暗い時間帯に活動をしていた夜行性であることは、犬の眼球の構造や高周波の音への感度が高い聴覚反応を鑑みれば想像できる。にもかかわらず、犬は私達人間のタイムラインに合わせて、特に夜に休息をとってくれている。だからこそ、全てのリスクを犬に押し付けるのではなく、自分が出来る工夫や調整に努めてみよう。

次の章では、実際に「対話」する際の、ポイントについてシュミレーションしてみたいと思う。

 

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<第二章>

では、さっそく【対話】のシュミレーションをしてみよう。

【自分との対話】

<誤飲誤食>

フレブルの飼い主であれば誰もが一度は「危ない!」と感じたことがある愛犬の誤飲誤食。オモチャだけではなく「え!そんなものも飲んじゃうの!?」というものでも飲み込んじゃうのがフレブルたち。動物病院では、薬物で嘔吐を促したり、内視鏡で摘出するケース、場合によっては開腹手術を選択せざるおえないことも多い。特にフレブルの麻酔には消極的な獣医も多く、誤飲誤食については、まずはパピーの頃から飼い主が予防と対処の練習を愛犬と共に行っておきたい最重要課題でもある。

 

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対話ポイント 1:ご自身が慌てていなかった!?

誤飲誤食を目撃したとき、愛犬を思うが故に「ダメー!!」といったように、愛犬以上にご自身が慌てて興奮していなかっただろうか?

我々人間は、慌てる心情により、脈拍が上がる。脈拍が上がると体温が上がる。体温が上がると匂いが強くなる。匂いが強くなることは犬たちにとって「刺激」となり、結果的に興奮のトリガーになりうる。

まず犬は私達人間のように手を器用に使うことが出来ない。人間が対象物を手で捕獲し、視覚で確認してから確認をする代わりに、まずは口で捕獲するのだ。犬の嗅覚が優れていることは周知の事実だが、犬が口にくわえたものをヤコブソン器官(鋤鼻器)と呼ばれる感覚機構で認知していることはあまり知られていない。手を人間のように器用に使えない犬が、口でくわえることがファースト・コンタクトになることは不思議ではないだろう。またそのリスクも伴うことから、犬のマズル周りには、複数の触覚器官「ひげ」が生えている。犬のヒゲは、被毛よりも太くて長く一般的には、触毛洞毛と呼ばれる。触毛は、哺乳類の多くで触覚という五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のひとつの感覚機能に分類される。犬のひげ毛根には周囲の情報を感知する役割や、感情を表す役割がある。ヒゲの根元には感覚器が存在し、血管や神経が通っている。猫ほどは実用性はないとされるとはいえ、顔周りには5箇所のひげがはえていることを考えると、やはり、まずは口でくわえないと把握できないものに関する情報を嗅覚以外で少しでも収集したいという犬なりの理由が想像できる。つまり捕獲後の情報処理をする準備ができていると言えるのだ。一方、私達飼い主は「犬がくわえる=誤食」と認識し、犬が何かをくわえた段階で興奮してしまう。それこそが犬にとって「大好きな飼い主の感情が高まる=匂いが強くなる」タイミングと合致し、捕食行動が喜びや楽しみへと繋がっていくプロセスとしてコンプリート!毎回、行動強化されるのだ。

 

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対話ポイント 2:故意に取り上げていないか?

誤飲誤食のタイミングで私達がしがちな行動のひとつとして、必然的に「口にいれたものを取り上げる」というのがある。飼い主は「安全」ために最善だと思った行動に違いないが、残念ながら犬には異なって映る。犬は「(自分がみつけたものを飼い主に)獲られた」と理解する。まさにその認識の違いこそが、誤飲誤食の行動強化とつながるのだ。

犬の口腔内を確認してみてほしい。私達人間とは大きく異なる構造をしていることに加え、口にくわえたものを奥に取り入れるかのような形状をしているのが判る。飼い主が口の中からものを取り出そうとするそのとき、力学的に犬の歯に抵抗がかかる。それは犬にとって「興奮・刺激」として伝わる。結果的に飼い主が「取り上げよう」とする行為自体が、犬の誤飲誤食の行動を強化してしまっていると言えるのだ。したがって、我々専門家はパピー期から口にくわえたものを出すことは「楽しい!」ということをゲームを通して教えるよう指導している。犬に「出さないといけない」ではなく「出すと楽しいことがある」と経験学習を与えていく。

 

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対話ポイント 3:落とし所をつける

誤飲誤食が健康管理に重要だからこそ、「二度とこんなことしちゃだめ!」といいたいところだが、犬にとっては自分で見つけた楽しみな対象物を取り上げられ、さらには叱られたら、ストレスが指数関数化してしまう。心配するが上であることは確かなのだが、その時々の感情を犬にぶつけるのは、注意しよう。既にその感情は自分のものでしかない。怒ることと叱ることは伝わるものが大きく異る。

 

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【愛犬との対話】

<散歩の興奮と引っ張り>

フレブルとの散歩は楽しい。歩いているときのお尻とか、目でも楽しませてくれるが、他の犬にはないBGM(呼吸音やパンティング音)は、高揚感を刺激してくれる。それが故に、散歩中に他の犬から吠えられることも多い。きっと犬業界でも「フレブルは目立ちすぎる」のだろう。

とはいえ、毎日の散歩だからこそ「もう少し落ち着いて歩きたい」と思っているフレブルオーナーも多いのではないだろうか?そこで、この機会に愛犬と話し合ってみると良い。もちろん彼らと向き合って話かけても、顔をなめられて終了すると思うので、散歩時に愛犬の気持ちを確認する方法を提案したいと思う。

対話ポイント1:私はただの同伴者?

まずは散歩中、興奮していると感じた際、散歩の足を止めてみよう。その時、愛犬が気にせず継続して前に進もうとしていたとしたら、あなたは単に愛犬の散歩の同伴者でしかない。足を止めた際、もしあなたを観てくれたとしたら・・・実は、そこには愛犬との会話が生まれている。愛犬は「どうしたの?」と飼い主を気にする気持ちがあり、良好な関係性があると言えるだろう。

 

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対話のポイント2:力学的コミュニケーション!?

我が国での散歩では、必然的に愛犬と Leash でつながっている。私は、Leash のハンドリングとは、我が子と「手をつないでいる」イメージであってほしいと思っているのだが、フレブルの体重や興奮度の高さからか?意外と力を使ってフィジカルや散歩をしている方も多いように思う。私達が力を行使すると、犬たちも作用反作用で力で応えてくるので注意したい。では、どういうコミュニケーションに努めてみるといいか?それは、「対話ポイント1」のあとに、少し Leash を緩めてみると判る。止まってみた後、Leash を緩めるとすぐに前に突進してしまう子は、あなたとのコミュニケーションを「力」で理解している。前に進めば、飼い主はついてきてくれると経験学習していることが考えられる。一方、止まったものの、こちらを観ない。でも進もうとはしない。Leash を緩めてみても、進まず、その場に待機している場合、目視確認はしないものの、飼い主のことはいつも気にしているような、質の高い関係性がみえてくる。そう、フレブルはバッドイヤーと呼ばれる大きな耳を持っている。さらに犬は左右異なる音を感受することが出来る。それぞれが違う動きをするのはそのためだ。犬は持ち合わせている感覚器官を駆使して、大好きな・尊敬する飼い主と常にコミュニケーションを図っている。そう思うだけで、自然に「ありがとう」と伝えたくなる。

 

 

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対話のポイント3:道具からの経験学習

フレブルオーナーなら、首輪ではなくハーネスの選択を考えたことがある方も多いだろう。理由は複数ある。

・興奮しやすいから

・呼吸を考慮して

・首輪が抜けやすいから

・力が強いから

ただ、踏まえておきたいのは、ハーネスとは本来ソリ引き犬の道具だったということ。重い荷物を運びつつけるハスキー等の犬たちの体の負担を減らすために作られたのがハーネスだ。引っ張っても力を分散させるので、引っ張ることに対しる抵抗は減る。つまりハーネスは「引っ張っても大丈夫」な道具でもあるのだ。大事なことは、引っ張る前提で考えるのではなく、引っ張る理由や愛犬の気持ち・意図を踏まえて、対応すべき点。さまざまな理由でハーネスを選ぶのであれば、ハーネスにも種類があるので、適宜に選択することが愛犬の身体にも優しい。ハーネスが飼い主として逃げ場になっていたとしたら、改めて愛犬と会話することで改善・軽減出来る部分が増えるはずだ。その点は専門家はあらゆる犬種・性格・年齢の犬と接しているので、適切なアドバイスを下してくれると思うので、是非相談してみてほしい。

 

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愛犬の行動には理由がある。幸いにもフレブルの感情や気持ちは、一緒に暮らしていて、とてもわかり易い。まずは日常的に話しかける「会話」の機会を増やしてみてほしい。そして、次のステージに進みたい方は「対話」に努めてみてほしい。きっと愛犬からたくさんのメッセージが帰ってくるはず。その一言一言に耳を傾け、対話が成立してくると、今日よりも明日、愛犬との LOVE は強くなる。

 

Captain

コメント

  1. 紙ヒコーキ より:

    コロナ禍、平常心は自分にとっての課題です。
    自分の状況に彼が順応してくれていることに日々感謝です。
    とても繊細な口周りへのタッチはずっと出来ないままですが
    思いがけずステキな化学反応に出会えたときの心の「キュン♪」
    その瞬間を大事にしたいと思っています。

  2. Captain より:

    紙ヒコーキさん、コメントありがとうございます。
    課題を克服することも大事ですが、それよりも課題と「向き合う」姿勢と気持ちが大事だと思います。
    おねしょは叱っても治らないそうです。
    結果は必然的についてくる。
    そう考えると、アプローチも変わってきそうですね!

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