遊びの合間にみられる、犬の共感力
犬に共感する気持ちは本当にあるのでしょうか?
他者に共感する心を成長させていく過程で、わたしたち人間は情動伝染(emotional contagion)や模倣などを学習していきます。模倣とは他者の行動を見て真似したり同じようなことをすること、情動伝染とはあくびや笑いなど感情移入を伴わずに人から人へとうつるもののことをいいます。したがって犬に共感する能力があるかどうかを知るためには、情動伝染や模倣がみられるかどうかを観察する必要があります。
犬の情動伝染に関する研究については、これまでに『人から犬にあくびがうつるということ~犬のもつ共感力』や『犬は人の悲しみを理解しているのか?』などでも紹介してきていますが、人と犬との間ではなく、そもそも犬同士の間でも情動伝染や模倣は見られるものなのでしょうか。イタリアのピサ大学の研究チームが研究をおこない、犬に共感する気持ちがあることを支持する研究結果が『Royal Society Open Science』に発表されました。
研究者らはイタリアにある公共のドッグパークに出向き、3ヶ月~6歳までの49頭(オス23頭、メス26頭)が公園で自由に遊ぶ様子を映像におさめ、解析を行いました。
その結果、77%の犬が相手の行動そして表情をも素早くまねていました。そして、お互いに知り合いであるほうが模倣する行動をとる傾向にあり、お互い模倣しあう場合のほうがより長い時間遊ぶ傾向にあったそうです。これらについて研究者らは、素早い模倣と情動感染のつながりが犬にも存在していることを示唆するものとしています。
"細やかな感情を交流させるには、人がポジティブな表情をつくって犬と接すること"と、スウェーデンのドッグトレーナー、エヴァ・ボットフェルトさんがセミナーでお話しされていましたが、人と犬が共有できる感情はたくさんあると思います。そして今回の結果は、親しくなればなるほどその傾向が強まる可能性があることも示唆しています。犬が人と同じように考え感じているだろうと擬人化してしまうことには気をつけつつ、犬と人の間での豊かな感情の交流がはかれるようになっていきたいものですよね。
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