幸福の香り!?

人が発する匂いで、犬は行動を変える

「犬は体臭を通じてヒトの恐怖や幸福を感じ取り、行動を変えている可能性がある」

という論文が発表されました。

 
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犬と生活していると、彼らが私たちの気分を敏感に察して反応しているように感じることはあります。

 
イライラしていると近づいてこなかったり、悲しい思いをしていると優しく寄ってきてくれたり。

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この度、Animal Cognitionに掲載された論文には、犬は化学物質を介して人間の恐怖や幸福感を”嗅ぐ”ことが示されています。

ナポリ大学のD’Aniello博士らは、体臭による種間の感情伝達に関する研究の一環として、人間の体臭が犬に与える影響を調査しました。

実験に協力したのは、ゴールデン・レトリバーとラブラドール・レトリバーの計40匹(いずれも家庭犬)。実験環境は、実験室に(a)犬、(b)犬の飼い主、(c)見知らぬ人、および(d)汗のついたディスペンサがあるというものです。犬には心拍数モニタが装着され、実験前には自由に部屋を探索する時間が与えられました。

ディスペンサには、事前に実験参加者ではない男性の腋窩から採取した汗(①恐怖下で採取された”恐怖汗”、②幸福時に採取された”幸せ汗”)が入っているものと、③汗なしのものの3種類が用意され、それぞれの犬にはこのうちの1つのディスペンサが割り当てられていました。

実験時間は5分。研究者らは、実験時間内の犬の反応(心拍数、ボディランゲージ、飼い主や見知らぬ人への犬の行動など)を録画してデータとして抽出し、これを統計的手法を用いて分析しました。

結果、匂いの違いによって犬の行動が異なることがわかりました。

”恐怖汗”は犬にストレスを与える

”幸せ汗”を割り当てられた犬では、飼い主指向の行動が短く少なく、見知らぬ人との行動が頻繁にみられました。”幸せ汗”を嗅いだ犬は、飼い主に安心を求める必要はなく、見知らぬ人にご挨拶できるほどに十分にリラックスしていることを示していると考えられます。

一方、”恐怖汗”に晒された犬は、一定の時間(場合によっては実験時間中)中頻繁にストレス関連行動を示しました。これらの犬には飼い主指向の行動が多くあり、見知らぬ人との接触は少なく抑えられました。犬の心拍数は実験時間中に一貫して高かったことからも、犬がストレスを感じて飼い主に支援を求めて近づいたことが伺えます。

著者らは論文で「ヒトの化学物質(汗のにおい)が、イヌの生理学的状態(心拍数)および行動の両方に有意に影響を及ぼす」と結論づけています。

犬は私たち以上に、人間の心の状態を正確にわかっていることが、科学的に証明されました。

私たちは顔の表情や仕草から人の気持ちを推測しますが、時にその心理を読み間違えることもあります。
一方、犬が参照するのは、化学物質という数値化できる指標です。
犬に「どうして私が怖がってるのがわかるの?」と聞いたら、「わからない方がおかしいよ。だってこんなに明確なんだから」と言われそうですね。

D’Aniello博士は「我々の種は視覚を重視するために、嗅覚システムの役割は過小評価するようだ。犬の嗅覚は我々のものより、はるかに優れている」とコメントしています。

 
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犬とコミュニケーションをはかりたいときや、呼び戻しの時は、表情や声のトーンだけでなく、匂いに(あるいは感情)にも注意を払ってみるとよい反応をひきだせるかもしれません。これは、まさに昨今 DOGSHIP も参加している東京学芸大学との共同研究の中でも子どもたちに伝えている部分でもあります。

自分の感情を言葉に乗せる、表現する。そうすることで視覚情報だけでなく、嗅覚情報としても犬たちにメッセージとして伝えることが出来るのです。

cf> 
[1] D’Aniello, B., Semin, G. R., Alterisio, A., Aria, M., & Scandurra, A. (2017). Interspecies transmission of emotional information via chemosignals: from humans to dogs (Canis lupus familiaris). Animal Cognition, 1-12.
[2] Dogs really can smell your fear, and then they get scared too | New Scientist

 
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