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2011年
04月13日

63. 動物の被曝

おさまらない余震。未だ先が見えない原発。日々刻々と変わる情勢を気にしながら、傍らにいる動物への影響を危惧する人は多い。では、感受性が高いとされる動物に対する放射線の影響とは、どの程度のものなのだろうか?

先日、ひとと動物のかかわり研究会さまよりお声かけをいただき、「ペットの被曝と放射性物質による環境汚染に対する考え方」を議題にした勉強会に参加した。専門家対象の勉強会だった為、参加されたくても出来なかった方もいたと思うので、みなさまにもこの場を持って、簡潔に内容をご紹介させていただこうと思う。

講師は夏掘雅宏氏。獣医放射線学を専門とされ、現在は日本動物高度医療センター院長を務めておられる。

昨今の状況下において、私達が不安をかき立てられる一番の要素は、「放射線とは、見たり、嗅いだり、聞こえたり等、感受することができない」という点だと思う。今回の勉強会を通じて、正しい知識を身につけることで、周囲の行動に振り回されることなく、安全に判断出来る事が分かった。

夏堀氏曰く、メディアで発信されている報道内容・表現が「極めて曖昧」であり、実際の数値等をオープンにすることが、逆に国民を不安にさせることがある。その数値が意味しているところを、正しく示唆し報道することが必要であると説かれていた。

例えば、放射線量は、生物への影響線量を示す単位である Sv(シーベルト)を使用するが、線量率は Sv/h(シーベルト毎時)であり、時間軸で捉える必要がある。線量が強いからといって危険とは限らず、積算量が重要なのだ。また、放射性物質には半減期があり、最近よく聞く「ヨウ素 131 」は8.02日で放射線量は指数関数的に一気に下がっていくので、そのまま積算されるわけではない。

放射線と聞くと、悪いイメージをもつ方も多いと思うが、私達の身の回りにあるもので、その恩恵を受けているものは多岐にわたる。

【ラジアルタイヤ】
加工工程で放射線をあてる事で、強度が高まり、成型加工容易になる。

【食料品】
放射線を照射することによって、ジャガイモなどの発芽を予防する。

【エックス線荷物検査装置】
空港での手荷物の内部検査に利用されている。

【煙探知器】
発せられるα線の電離作用によって、火災による煙を感知する。

【蛍光灯のグロー放電管】
発せられるβ線の電離作用によって放電が素早く起こり、蛍光灯が点灯しやすくさせる。

【表示用放電管】
レジの金額表示、カメラのストロボ充電表示に用いられる。

【医療分野】
ガンの治療、甲状腺治療、CT、エックス線撮影に用いられる。

そして、私達は、森林浴、温泉、食事、飛行機での移動等、それぞれ「宇宙から」「大気から」「大地から」「食物から」日々の暮らしの中でも、実は日常的に被曝(*1)している。しかし、時間軸で考えると、身体に影響が出る放射線量ではない。宇宙空間に長期滞在する宇宙飛行士でさえ、帰還後の被曝については現在問題視されていないのだ。

蓄積という観点でもう少し考えてみたい。
ご存じの通り九州は温泉の宝庫。飲用を勧めているところもあり、私も子供ながら、よろこんで飲んだものだった。氏によると、あれも自主被曝。ただ、体に影響を及ぼす危険値に達するには、相当量の温泉水を飲用する必要があり、放射線量の蓄積という観点から見るとと、結果被曝する量よりも水分摂取過多の方が問題になるだろうという事だった。さらに、ラドン温泉で有名な街では、ガン死亡率が全国平均よりも明らかに低いというデータもある。

そこで、やはり気になるのが犬への影響だ。感受性が高いとされる子供や動物への影響は、科学的には1.5倍程度で換算される程度であり、数値的に差異はないとされる。愛犬にミネラル水をあげるようとし、それが硬水だとしたら、尿結石になる確率を上げることが懸念される為、ヒトと同じように判断しないよう注意しなければならないが、水の飲用による内部被曝の可能性については、過剰に心配する必要はない。

外部被曝についても、散歩後のコーミングや、定期的なシャンプーをすることで(ヨウ素は水溶性)、放射線物質を取り除けるので、お散歩もこれまで通り楽しんでいただきたい。

最後に大変興味深いお話を伺えたので、ここに紹介したい。

放射線ホルミシス「適度な放射線は身体にいい」

「放射線は微量であれば逆に有益である。低線量域での照射は、生物の成長・発育の促進、繁殖力の増進及び寿命の延長などの効果をもたらす事がある。」

提唱者:ミズーリ大学 Thomas. D. Luckey

それは、60 兆個と言われるヒトの身体の細胞の入れ替わりに適度な刺激となるからなのか?放射線ホルミシスについては、未だ研究段階ではあるが、「放射線=悪い物質」というイメージは払拭して良さそうだ。

現在、年間に3万人といわれる自殺者や交通事故の数を考えると、考え事をして事故にあったり、放射能を気にしすぎて鬱状態にならないように心掛けたい。

「正しい知識を身につける」もしくは「知る努力を怠らない」ことで、水の買いだめをする必要もないし、風評に振り回されることもない。愛犬のためにも、私達飼い主こそが社会情勢を冷静に判断し、行動に移していきたいものである。

*1:「被曝 -exposure」とは、放射線等にさらされることを意味し、「被爆 -to be bombed」は核兵器による爆撃を受けることを意味する。

(2011.4.13)

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